もたないこと

 クローゼットにあった古着を半分捨てた。休日の外出が減ったら服も買わなくなって2,3年前の服ばかりが残ってた。

 薄緑のタートルネック,リメイクのジーンズ,ニット切り替えのシャツ,とか。買ったときの店員との会話とか,いつどこで誰といたときに着てたかとか,蓋をしてた記憶も朧げに蘇ったりする。それは若さの象徴で今はもう着れない。断捨離のコツは「捨てない理由が過去なら思い切って捨てる」。

 着なかった服はリサイクルショップに,愛着のあった服はあえて資源ゴミに出した。古着の唯一性がすきだったから誰にも着られないで最後まで唯一であって欲しかった。

 音楽と同じで1年も経てば服の嗜好も当然変わる。カネコアヤノももう聴いていない。 

 結局,所有は重荷になる。物理的にも心理的にも。モノは記録として残って忘れていたことを浮かび上がらせる。でも記録に頼らないと思い出せないものはきっと大切ではない。大切なことは潜在的に記憶としてカラダに染みついて自然と振る舞いに現れるはずだから。

 記憶に余白をつくっておくためには,もたない方がいい。モノに限らず,ヒトも。